求めるものは「変化」

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変化を恐れない?

「変化を恐れない」これはよく耳にするフレーズです。固執せず、最適な形に向かってサービスや企画を変更するという視点は重要です。

一方で「変化を恐れない」という言葉の裏には、「(仕方ないけど)変化を受け入れないといけない状況が存在する」というニュアンスが含まれているようにも感じています。

個人的には「恐れる」とかそういう存在ではなくて、「歓迎」してるし、企画のプロセスにおいてはそれ自体が「目的である」すら言えます。

企画やコンセプト立案は「如何に変化をさせるのか」が鍵であり、そこには否定的なニュアンスは全くないのです。

触媒としてのプロトタイプ

化学の実験等では「触媒」という存在があります。

触媒というのは以下のようなものです。

「化学反応の前後でそれ自身は変化しないが、反応の速度を変化させる物質。水素と酸素から水を生じさせる際の白金黒 (はっきんこく) など。比喩的に、ある状態を変化させたり何かを生み出すための刺激となった人や物事など。」

「言語化やプロトタイプ作成」を作ることで、曖昧としたイメージが具体的になったり、目指すべき形が変化していきます。

私は企画をするときに、「新しい気づきや現在の誤りを発見するため」に、アイディアを明確に言語化し、プロトタイプを作ります。

それは、プロトタイプをアイデアの具体化のための触媒として利用する、ということです。

もやもやっとしたものを具体化する

アイデアや企画というものの初期段階は、非常にモヤモヤとした漠然としている存在です。

「モヤモヤしているけど、なんか良さそう。」「自分もよくわからないのだけど、良い気がする。」

それが実際に良いアイデアかどうかは関係なく、初期の段階ではあらゆるアイデアがそのような状態にいます。

それに様々な刺激を与えて、その「もやもやしたもの」を具体化させ、変化させていくのです。

叩いてみたり、色を塗ってみたり、分割してみたり、囓ってみたりしながら、それの変化を観察していきます(もちろん比喩としてですが)

その刺激が先ほど話していた触媒であり、具体的に言えば言語化したりプロトタイプ作成ということになります。

3つの階層を上下して考えるプロセス

企画をするというのは「ゴール」、それを解決する方向性の「コンセプト」、コンセプトを実現するための「具体的な解決方法」の3つの階層を上下しつつ何が正解なのかを考えるプロセスです。

  • 第一階層:ゴール
  • 第二階層:コンセプト
  • 第三階層:具体的な解決方法

企画やアイデアの生み出す行為は最終的なアウトプットを考えるプロセスに見えて、実はその三階層を上手く上下しないと正しいアイデアをつくることができません。

プロトタイプは、抽象から具象への転換

プロトタイプを作成するのは、漠然としたコンセプトから具体的な解決方法を模索するための手段です。抽象から具象への転換を支援する方法です。

作成されたプロトタイプを目にして「あれ?これ上手く機能していないな?」ってなったらしめたものです。

それは具象化された解決策に問題があるのかもしれませんし、その前プロセスの抽象化されたコンセプトに問題があるかもしれません。

実際のところ、両方間違っている可能性も十分にあります。

コンセプトの見直し

コンセプトは「目標とするゴールを実現するための」方向性です

「ゴールからそれを実現する方向性(コンセプト)を決定する」プロセスは、抽象的なレイヤーでの転換になります

ゴールの本質的な意味を理解し、それを的確に解決する方向性を見つけ出すことになります。

コンセプトを考えて、「あれ?これ上手く機能していないな?」となったらしめたものです。(2回目)

コンセプト自体が間違っているのか、そもそも課題設定やゴール設定が間違っているのかを検討を開始します。

ゴール設定が間違っているというのもまた本当によくある話です。あの山を登れという指示だったのでなんとかして登ってみたところ、間違った山だったっていう状況です。

一つの選択肢の正解確率

何かを企画したりするのに慣れていない人は、第三階層のたった一つのアイデアに固執しがちだったりします。

ですがそれが正しい選択肢の可能性は低いように思われます。

ゴールの可能性が3個あって、それぞれにコンセプトの可能性が5個あって、具体的な解決方法がそれぞれに10個あると仮定したら、それが正しい可能性は3×5×10の150個ある可能性の一つなので、もちろん0.7%位では正解かもしれませんがその程度です。

実際のところ、ゴールが正しく設定されていない可能性も多くあって、そうなると全選択肢が間違っているケースも日常茶飯事です。

「今の形は間違っている」という前提

アイデアを考えそれを捨て、コンセプトを考えてそれを捨て、ゴールを設定を見直して…っていう「取捨選択」と「階層の移動」を繰り返しを行っていきます。

基本的に「今の選択肢は間違っている」という前提で物事を考えるため、そのアイデアを変化させ、アイデアを捨てる切っ掛けを常に求めています。

前述のようにその「触媒」がプロトタイプや言語化であり、他にも誰かにアイデアの壁打ち相手になってもらうというのも触媒の一つかもしれません。

私たちは、最初の漠然としたアイディアを、さまざまな触媒を通じて変化させ、より良いサービスや企画を具現化するプロセスを実行しています。

その意味で、私は「変化」を恐れてはいません。むしろ、毎日どのように変化を促し進行させるかという議論をしています

私たちは変化を促す仕事であり、その変化を進める触媒としてプロトタイプ等が存在するということです。理解されている方には当たり前のことかもしれませんが、とても大事なことではないかなと思っています。

この記事を書いたのは

福田 智洋
シックスワン株式会社。 ネット系上場企業で、サービス企画の責任者を10年以上経験。独立後も上場企業の新規事業立上げ支援などに関わる。 2018年〜2020年 国立大学にて課題解決に関する講義を担当
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