海外HRレポート- Recruiter.com-

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今回2回目となる海外のHRレポート。今回は、****を提供している、Recruiter.comをリサーチしました。日本企業でいうと、***に該当するサービスのようですが、かなり手広くサービスを展開しているようです。


調査概要

米Nasdaq上場企業Recruiter.com Groupの、

  • 成長経緯
  • 製品の特徴
  • 財務状況
  • ビジネスモデル

などに注力して調査する。


経緯[1]

2015年2 月デラウェアコーポレーションとして設立。
2019 年 3月関連会社である Recruiter.com, Inc.との合併を完了
2021年7月Nasdaq証券取引所で取引を開始[2]
2023月4月Recruiter Marketplaceの立ち上げを発表[3]
2024年現在スタートアップ企業からフォーチュン100 企業までを含む、多くの企業に製品サービスを提供している

同社の採用専門家や求人者へのネットワークの広がりを見せるスライドとして、2023年1月に公表された投資家向けプレゼンテーション[4](以下)によると、300万人を超えるSNSのメンバー、3万人以上の採用専門家、月間10万人のビジターなどのアクセスを公表している。最新のデータからは***という伸びを見せている。


提供製品・サービス

Recruiter.com Groupは、ニューヨークに本社を置く、柔軟な人材獲得ソリューションを提供するオンデマンド採用プラットフォーム約3万人の採用専門家によるネットワークと、採用マーケティングオートメーションにより、Recruiter.com は企業が今日の複雑な採用課題をビジネスのニーズに合わせて解決できるよう支援している。

以下は前述の投資家用プレゼンテーション2023[5]に載っている、柔軟な課題解決に即したオンデマンド採用ソリューションの概略である。

製品の特長

同社のホームページ[6]によると、同社が提供するオンデマンド採用ソリューションは、4つのカテゴリーに分けられて提示されている。以降4カテゴリーの詳細を解説していく。


オンデマンド採用専門家

オンデマンド採用専門家サービス[7]は、同社の専門契約採用専門家のネットワークを活用した、あらゆる規模の企業が採用チームを簡単に拡張するのを支援するサービス。社内に採用チームが存在しない場合、またはチームを(一時的に)増やす必要がある場合、Recruiter.comの採用専門家がチームの一員となって拡張を支援する。

同社の契約採用専門家ネットワークは、数千人のコーディネーター、人材調達担当者、採用専門家で構成されており、ヘルスケア、エンジニアリング、製造、建設、教育、不動産など[8]様々な業界で働くことができる採用専門家など、業界に精通したプロフェッショナルが採用担当となる。

この採用専門家は、広範な審査プロセスにより専門家が選別されており、同社はクライアントへのヒアリング・採用専門家候補者の選定・審査・決定の、複数段階の審査プロセス[9]を通じて、採用専門家が企業に適格であることを確認し保証している。

地域の採用ニーズを満たすために、同じ文化背景を持った採用専門家など、世界中のどこでも現地の契約採用専門家を提供できるグローバルリーチもあるという。

実績として、スタートアップから大規模までの、採用プロジェクトで採用専門家が30名必要とする場合でも、同社が対応可能で、そのスピードは約2日以内に資格のある採用専門家と面談が可能だという。

さらに月ごとの契約により、ニーズの変化に応じて柔軟な採用を拡大できる点も企業にとっての大きなメリットとしている。


オンデマンドソーシング[10]

上記の様な実際の採用専門家が介入するソリューションに加え、コストを抑えながら自分たちで適任な候補者を見つけるソリューションであるオンデマンドソーシングもRecruiter.comでは主力事業として提供している。自社内の人材プールに十分な候補者がいない場合も、優秀な候補者を調達して採用プロセスをスピードアップし、採用チームの負担を軽減するのに役立つ。企業だけでなく、人材紹介・派遣会社へもソーシングソリューションを提供している。

このソーシングを活用すると、採用担当マネージャーは、適任で興味を持った人材を安定して受動的に見つけることが可能となる。約1 億 5,000 万以上のプロファイルに到達でき、スマート採用ソフトウェアAI ベースのスコアリングエンジンが何百万もの変数を分析し、最も適任な従業員を見つけて推薦してくれる。適格で厳選された候補者を、メールまたは使用する採用ソフトウェアで受け取ることができる。

このサービスの背景には、正確で更新されたプロフィール情報を基に、適切な候補者の正確な連絡先情報を取得した情報取得率があることを挙げている。 また、採用担当マネージャーから直接キャンペーンを送信し、何が最も効果的かをテストすることも可能。シンプルなエンゲージメントツールを使用して、メッセージを自動化し、A/B テストを実行してパフォーマンスを向上させる機能だ。

さらにリアルタイム分析を使用して、採用パフォーマンスを最適化し改善する。プラットフォーム全体にレポートと分析を導入し、調達プロセスの主要な部分がどのように実行されているかを測定するため、ソーシングの採用分析としても利用できる。

そのため人事担当や採用チームは、採用への時間を削減することができ、代わりに未来の従業員となる候補者への関わりや、チームとのコラボレーションなど、従業員満足度を上げる施策に時間を費やすことができる。


メディアビストロ(Mediabistro)[11]

同社は、トップメディア関連者、コンテンツマーケティングチーム、報道機関、ストリーミングサービス、ビデオチームなどの人財の、主要な採用源として機能している。クリエイティブ専門家の求人掲示板が充実しているため、メディア業界の最適な候補者に即座に連絡が可能となっている。

求職者側としてはMediabistroは独立のコミュニティも形成しており、そこではBloombergやCNNなどトップクラスのメディアをクライアント例とし、メディア、マーケティング、広告、出版などの分野でのクリエイティブな人材を募っている。彼らにはMB+プレミアムアクセスという教育ツールも提供しており、Unlimited に登録すると、クリエイティブおよびメディアのキャリアを向上させるために必要なオンラインコースやツール、サービスにアクセスできる。


採用専門家向けの求人掲示板[12]

この求人掲示板は、同社の採用専門家向けのもので、同社の抱える優秀なフルタイム採用専門家と、企業をここで結びつけることができ、彼らと仕事を創出することができる。


ビジネスモデル

Recruiter.com Groupのビジネスモデルは、2022年末までをまとめた最新の年次報告書[13]によると、以下の5つのカテゴリーが存在する。


ソフトウェアサブスクリプション

雇用主が人材を採用できるよう、Webベースのプラットフォームへのサブスクリプションを採用。企業はこのプラットフォームを使用し、データサイエンス、高度な電子メールキャンペーンツール、予測分析を使用して候補者の調達、連絡、選別、分類を行うことができる。
ソフトウェアサブスクリプションの一部として、強化されたサポートパッケージとオンデマンド採用サポートサービスを追加料金で提供が可能。


オンデマンド採用専門家

この項目は、プロの採用専門家の紹介に特化したコンサルティングおよび人材派遣サービスで構成される。採用専門家の継続的な作業に対して合意された時間ベースの料金を雇用主クライアントに請求することで、オンデマンド採用専門家のカテゴリーとして収益を得る。

同社は採用専門家のネットワークから採用専門家候補者を直接調達しており、さらに、人材計画、人材評価、戦略的ガイダンス、および組織開発サービスも提供しており、これらを「人材効果」プラクティスとして販売している。企業は、合意された時間ベースの料金で一定のコンサルティング時間数を前払いする。


フルタイムの人材紹介

この項目は、フルタイムのポジションの人財を雇用するために、資格のある候補者を雇用主に紹介することで構成されている。同社は、雇用主が同社が紹介する候補者を雇用するたびに一時料金を得ることで、フルタイムの紹介収入を生み出す。
雇用主は、同社のプラットフォームまたはその他のコミュニケーションを通じて、雇用のニーズを通知する。同社は、プラットフォームやその他のツールにアクセスする独立した採用専門家のユーザーを通じて、雇用主が募集している仕事に対する資格のある候補者の紹介を調達する。同社の社内人材デリバリチームと呼ばれる専任の社内従業員によって、独立した採用専門家の取り組みをサポートし補完している。
フルタイムの紹介料は、通常、紹介された候補者の初年度基本給の割合、または合意された定額料金のいずれかとなっている。


マーケットプレイス

同社の「マーケットプレイス」カテゴリーは、同社のオンラインプレゼンスを活用する企業および個人向けのサービスで構成されている。

企業の場合、これには、デジタルニュースレターのスポンサーシップ、オンラインコンテンツのプロモーション、ソーシャルメディア配信、バナー広告、および採用動向と問題に関する四半期デジタル出版物などのその他のブランド電子コミュニケーションが含まれる。顧客との相互合意によって設定された価格設定および条件を使用して、マーケティング関連の成果物およびマイルストーンに関する合意を完了することで収益を獲得する。場合によっては、オンラインプラットフォーム上の広告による新規顧客の獲得により、企業が受け取る収益の一部を同社が得ることもある。企業は、募集中の求人を促進するために、同社独自の求人サイトに求人情報を掲載するために同社に報酬を支払うこともできる。

直接のクライアントとの仕事に加えて、同社はすべてのオンライン広告とアフィリエイトマーケティングの収益をマーケットプレイスとして分類している。

さらにマーケットプレイスには、個人向けに、求職者のプロフィールや履歴書を宣伝して雇用の確保、スキルアップやトレーニングを支援する履歴書配布サービスなど、キャリア開発と昇進を支援するサービスが含まれる。同社の履歴書配布サービスでは、求職者が自分の履歴書を同社のデータベースにアップロードし、プラットフォーム上の採用専門家のネットワークに配布する。同社は、このサービスに対する1回限りの定額料金から収益を得ている。

また、採用関連のトレーニング内容を網羅した採用専門家認定プログラムも提供しており、オンライン学習管理システムを通じてアクセス可能。採用専門家認定プログラムの顧客は、自己管理システムを使用してデジタル学習コースを先導している。プログラムが完了すると、完了証明書を発行し、その成果を証明するデジタルバッジをプラットフォーム上のオンライン採用専門家のプロフィールに表示できるようにしている。


コンサルティングおよび人材派遣

長期および短期のコンサルティングおよび臨時従業員のニーズを満たすために、雇用主にコンサルティングおよび人材派遣サービスを提供している。雇用主の特定の人材ニーズに適した人材を紹介し、雇用主に派遣された人材の時間と労働の対価を請求する。人材は継続的に派遣する。

コンサルティングおよび人材派遣の候補者を見つける同社のプロセスは、フルタイムの紹介雇用の工程と類似している。同社はこれらの雇用主クライアントに対し、同社が紹介した候補者の継続的な作業に対して、合意された時間ベースの料金で、通常は毎週の請求スケジュールに従って請求する。

また、同社には販売チームがあり、直接の雇用主のほか、ベンダー管理システム会社やマネージドサービス会社と販売パートナーシップを結んでおり、人材派遣、直接雇用、ソーシングサービスを購入するクライアントの販売チャネルの構築を支援している。契約企業のためにデリバリーチームと製品チームがサービスを提供して、収益の一部を受け取る。


財務状況

2022年12月期通期決算の財務ハイライト[14]では、以下の結果を発表している。

  • 2022年12月31日終了会計年度の収益は合計2,540万ドルで、
    2021会計年度の収益は2,220万ドルで、前年比14%増加。
  • 2022年12月31日終了会計年度の総利益は870万ドルとなり、
    2021会計年度の730万ドルと比較して、前年比19%増加。
  • 2022年12月31日終了会計年度の営業費用は合計2,550万ドルで、
    2021会計年度の2,420万ドルと比較して、前年比5%増加。
  • 2022年12月31日に終了した会計年度の純損失は合計1,650万ドルで、
    2021会計年度の純損失は1,630万ドルで、前年比1%増加。
  • 2022年12月31日終了会計年度の普通株1株当たり純損失は合計-1.22ドルで、
    2021年度の損失は-1.90ドルで、損失は前年同期比で36%減少。


Recruiter.com の CEOエヴァン・ソーン氏は、これに関して以下のコメントをしている。

「2022 年を通じての弊社の主な目標は、前年の買収をシームレスに統合し、同社の独自の製品提供とサービスを進化させ、売上の有機的成長を促進することでした。私たちは経費と組織インフラを再構築することで、複雑な経済情勢に戦略的に適応しました。

また、私たちは前進する中で、運用コストを大幅に削減しながら短期的な収益性を促進する、利益率の高いテクノロジー主導のサービスを提供することに重点を置いています。最近発表されたJob Mobzおよび新しい採用専門家アップスキルプラットフォームとの提携は、革新的な方向への進化における極めて重要なマイルストーンとなります。」


まとめ

人材ビジネスの成功は、最終的にはリクルーター(採用専門家)も含めた人材にかかっていると提示する同社は、顧客企業に対し、広範な採用専門家との月間契約と、適切な候補者を見つけるためのソーシングテクノロジーの双方を提供している。近年のHRスタートアップの大半がAIを基盤とした効率化や分析機能のサービスを提供する中、リアルな人材である採用専門家を広範なネットワークの中から提供するソリューションも一軸とするところに、同社の差別化が見られる。それには採用専門家のソフトスキルや業界のナレッジなど、ソフトウェアソリューションではカバーしきれない部分が含まれている。

同社HPの採用ソリューションの特長[16]によると、Recruiter.comは月ごとの契約により、採用専門家を48時間以内に派遣したり、優秀な候補者のパイプラインを7日以内に派遣したりできるという、迅速かつ柔軟な対応も特徴といえる。

また、ビジネスモデルとして多くのHRスタートアップがサブスクリプションサービスを基盤に提供する中、Recruiter.comはオンデマンドで月額料金を採用専門家提供をしている。ただし、長期契約を割引価格でも提供しているため、長期的な使用が見込める場合は長期契約に切り替えを勧めている。いつでも短期契約から始めることができ柔軟に対応もでき、予算内に収まるソリューションを目指しているといえる。


[1] https://www.annualreports.com/HostedData/AnnualReports/PDF/NASDAQ_Recruiter_2022.pdf (P5)

[2] https://blog.recruiter.com/recruiter-lists-on-nasdaq 

[3] https://www.accesswire.com/746313/recruitercom-launches-the-revolutionary-recruiter-marketplace-platform 

[4] https://www.slideshare.net/RedChip/recruitercom-investor-presentation-2023 

[5] https://www.slideshare.net/RedChip/recruitercom-investor-presentation-2023 

[6] https://www.recruiter.com/ 

[7] https://www.recruiter.com/on-demand-recruiting.html 

[8] https://www.recruiter.com/recruiters/ 

[9] https://www.recruiter.com/how-we-vet-recruiters.html 

[10] https://www.recruiter.com/recruiting-solution.html 

[11] https://www.mediabistro.com/ 

[12] https://jobs.recruiter.com/ 

[13] https://www.annualreports.com/HostedData/AnnualReports/PDF/NASDAQ_Recruiter_2022.pdf (P9)

[14] https://feeds.issuerdirect.com/news-release.html?newsid=6144668504995228 

[15] https://jp.investing.com/equities/recruiter-com-group 

[16] https://www.recruiter.com/  

この記事を書いたのは

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米山 怜子
オレンジコンサルティング代表、持続可能な経営や社会を目指すリサーチコンサルタント。オランダMBA卒、企業向け市場調査・戦略立案・統計分析やSDGs関連記事の執筆、経営者向けコーチング、経産省傘下中小機構国際化支援アドバイザーや日欧産業協力センター講師等を務めている。
https://www.orangeconsultancy.biz/ 
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