note社が「広告事業」を始めるそうだ。その発表の中で、「嫌われない広告」という表現に出会った。これはなかなか興味深い。広告は一般的に「嫌われもの」という前提があるからだ。 私自身、最近はアドブロックや広告が出ないブラウザを使い、以前より広告を見なくなっている。かつては仕事柄、世の中の広告を意図的に観察していた。電車に乗ると交通広告を端から端までチェックする癖はいまだ残っているが、ウェブ広告は性質が違う。クッキーを使った配信が多く、「広告」と呼ぶこと自体が正しいのか、違和感を覚えることすらある。
嫌われない広告の条件
「嫌われない広告」とは何か。結局のところ、本人が求めている情報であり、「そうそう、これが欲しかった」と思えるものである。つまり情報価値が高いものは嫌われない。 だが、実際には難しい。たとえば商品を検索した後に表示される楽天のリターゲティング広告。普段は煩わしく感じるが、繰り返し目にするうちに経由して購入し、結果的に満足することもある。この場合、広告は役割を果たしたとも言える。ただし、その背後には「千回の嫌悪体験」があるのも事実だ。つまり、広告全般が嫌われているというより、大半は嫌われる一方で、まれに良い広告がある──この構造が実態に近い。これは広告に限った話ではない。書籍でも映画でも、良いものはごく一部で、大半は凡庸だ。広告も同じで、「嫌われるものが一般的」というより、「良いものが少数派」と捉えるべきだろう。
特殊な求人広告
この観点で考えると、求人広告は少し特異な存在だ。広告とあるように、それは広告なのだ。求職者にとっては必要な情報であり、それが広告かどうかは問題ではない。本当に欲しい情報であれば受け入れられる。 構造としては、求人広告もクライアントが掲載料を払う形で成り立つ。他の分野ではすべてが広告という構造は珍しいが、求人サイトは「すべてが広告」で成り立っている点がユニークだ。バナー広告がなく、掲載そのものが有料広告である。インディードとかは違って、次にいうリスティングに近いのだが、求人広告という存在は、以前とてもユニークである。
リスティング広告はすごい
こうやって考えてみると、グーグルの「検索連動型広告」「リスティング広告」は嫌われない広告の一つの形だったのだなと思う。 自分が調べてる内容にある程度合致した内容がくるのだから、少なくとも嫌われてはいない。広告品質のスコアとかも秀逸なアイデアだったと思う。生成AIによって、このビジネスモデルも少しは見直しが入るように思うけれど、グーグルの検索ビジネスは本当にすごいな、と改めて思う。
さて、note社の広告はどんな形になるのだろうか?ちょっと楽しみな感じだ。
この記事を書いたのは
- 鈴木 康孝
- シックスワン株式会社。マーケティング&プロモーション領域担当。クリエイティブとかアイデアとか好き。尊敬する人、村上春樹さんと永井均先生と佐藤雅彦先生。今年の目標は、プログラムと英語をちゃんとやること。サウナと交互浴が大好き。
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