構造化面接を行う

スクリーンショット 2023-06-27 17.06.05

グーグルが実施していることで有名になった構造化面接ですが、この方法は、科学や論理を活かした方法で、ロジカルで再現性のある方法です。今回は、構造化面接のメリット・デメリットを整理し、どのようなステップで行えば良いか解説します。

構造化面接で認知バイアスを避ける

面接をおこなった方はわかると思うのですが、採用面接はとても難しいものです。行き当たりばったいの面接では、面接する相手の情報を引き出すことも難しく、面接対象者に対する正しい評価も行えないものです。フィーリングで、「この人はいいな」となったり、また会話がうまく進まない結果、「不採用」といった場当たり的な対応をしてしまっている方もいるのではないでしょうか。

その一方、構造化面接は、面接を行う前に、質問とそれに対する評価基準を決めておく面接手法です。面接の質問内容や評価方法が規定されているために、従来の面接に比べ、より客観的で公正な評価ができます。現在、採用の場で広く使用されている形式の1つで、Googleが行っているということで有名になりました。

構造化面接の良い点は、採用において、私たちが陥りがりな認知バイアスを防ぐことが可能になるということです。以下にあげる認知バイアスは、気がつかず陥っている可能性があるものばかりです(すくなくとも私は、です)。いわずもがなですが、人材採用は常に不確実性を伴います。「この人はうちの会社で長く活躍してくれるはずだ」と確信して入社してもらった方が、実際には思ったような働きをしなかったり、早期退職してしまったりということは多々あります。私自身、人を見極めることの難しさを実感しているところです。今回は、そんな中で気づいた採用における認知バイアスのリスクと直感の重要性についてご紹介します。

面接時におきる認知バイアス

確証バイアス

確証バイアスとは、自分の考えを支持するような情報にばかり注意を向け、自分の理論は正しいと過大評価する認知バイアスです。採用の場において、例えば「この資格を持っている人は優秀だから採用した方がいい」という考えを持っている場合、同じことを言っているSNSの投稿などに注目し、情報の選択や解釈に影響を与えて間違った判断や決定を引き起こす可能性があります。

類似性バイアス

類似性バイアスとは、自分に近い人や似たような属性を持つ人を好む認知バイアスです。人材募集をした時、自分と出身地や出身大学が同じ人が面接に来ると、それだけで好印象を持ってしまうといった形で現れます。

ハロー効果

ハロー効果とは、ある人物が持つ魅力的な特徴によって、その人物を全体的に好ましく思う認知バイアスです。例えばコミュニケーション能力が高く話していて楽しいという魅力を持つ人に、「論理的な判断をくだすことが苦手」といった欠点があって、それを見落としてしまいます。

ホーン効果

ホーン効果とは、ある人物が持つ欠点によって、その人物に対して全体的にネガティブな印象を持つ認知バイアスです。面接の場では応募者のマイナスな点に注目しすぎてしまい、その人物の本当の能力を勘違いしてしまいます。

ジェンダーバイアス

ジェンダーバイアスとは、性別に基づいて個人を評価する認知バイアスです。採用シーンでは「男の方が根性がある」「女の方がまわりを気遣える」といった評価をし、公正な評価や機会均を妨げます。

コントラストバイアス

コントラストバイアスとは、対象自体ではなく、その前後の出来事によって判断が歪んでしまう認知バイアスです。例えば、面接の場では最初の候補者が非常に優秀だった場合、その次の候補者が実際より劣っているように見えてしまうことがあります。

同調バイアス

同調バイアスとは、他人の意見や行動に影響され、自分の判断が歪んでしまう認知バイアスです。面接後に候補者について話している時、自分以外の面接官が良かったと言っている人について良く思えたり、ダメだったと言っている候補者についてネガティブな印象を持ってしまったりします。

構造化面接で認知バイアスを避ける

と、いくつかの認知バイアスをご紹介しましたがが、これらは採用における大きなリスクです。これを避けるためには、ポイントがあります。まず、こういったバイアスが存在しているとを理解することです。自分が誤った判断を下しそうになった時、「これは〇〇バイアスに引っ張られていないだろうか?」と気づくことができます。

そして、適切な客観性を身につけることです。採用では、学歴や経験など客観的な事実が大きく影響します。これにより、スペックが良ければ人物的にも優れていると思いがちです。また、コミュニケーション能力が高い人も良い評価をつけてしまいがちです。業務遂行能力とコミュニケーション能力はわけて考えなくてはなりません。

そして、構造化面接の導入です。構造化面接は、事前に作成した質問を用いて、候補者を判断する方法です。複数の評価者の判断を統合することによる客観性の醸成も、こうしたバイアス回避に有効です。次は、簡単に構造化面接のメリットとデメリットを、簡単に整理しておきます。

構造化面接のメリット

メリットの1つ目は、公正で偏りのない評価ができることです。すべての候補者に同じ質問をするため、「前職は何か」「どのような学歴か」といった候補者の経験やバイアスに引っ張られた評価を防げます。

メリットの2つ目は、より正確な評価が可能なことです。構造化面接では候補者のスキルや能力、行動を判断するために設計された質問を投げかけるため、より正確な評価ができます。候補者ごとに見える面のムラが生まれず、公平な判断が可能です。

メリットの3つ目は、採用プロセスの改善です。構造化面接を取り入れることで、候補者の選考の可視化や不適格な候補者の早期除外、より優秀な候補者の採用につながります。

構造化面接のデメリット

デメリットの1つ目は、質問の設計に時間がかかることです。構造化面接では、事前に設計された一連の質問を作成する必要があります。このプロセスは時間がかかり、専門知識を必要とする場合もあります。

デメリットの2つ目は、候補者が緊張しやすいことです。構造化面接に慣れていない候補者は緊張しやすく、これにより候補者の真のスキルや能力を見誤るリスクがあります。また、候補者がプレッシャーを感じる可能性もあります。

構造化面接実施のステップ

構造化面接は、以下のようなステップで実施をします。

1.質問の作成

候補者に対してどのような質問をするか、内容を固めます。ここがとても難しいので、別の記事でこちらは紹介したと思います。

2.評価基準の明確化

質問に対してどのような回答をしたらどのような評価になるのか、基準を明らかにして面接官全員に共有します。5段階評価や3段階での評価といった、評価にぶれがでずらいシンプルな基準が好ましいです。

3.面接を実施する

面接は、事前に作成した質問にそって行います。記録のために、候補者の回答を記録します。

4.評価

面接後、評価者は記録をもとに候補者のスキル、能力、および行動を評価し、他の面接官と共有します。評価結果をまとめ、次のステップに進むための判断材料とします。

構造化面接を行う上での注意点

以上のような形で構造化面接は進みますが、構造化面接を上手に運用するためのポイントをいくつかあげておきます。

1つ目は、質問の作成に時間をかけるということです。構造化面接では候補者全員に同じ質問をするため、質問が不適切だったり欠陥があったりすると、正確な評価ができなくなります。いわば、質問の設計が成否を決めるといってもよいほどです。

2つ目が、評価基準を明確化することです。評価基準が曖昧だと、候補者の評価に偏りが生じます。また、面接をする人が、この基準を理解しておかなくてはなりません。

3つ目が、評価者のトレーニングです。評価者である面接官は適切なトレーニングを受け、スキルを身につけて初めて正当な評価ができます。特に、質問に対する回答を評価する際、注意すべきポイントを明らかにしておくことが重要です。

そして、記録の作成をするということです。質問の内容やそれに対する回答を記録しなくては、正確な評価ができません。また、面接官同士で評価を共有するためにも記録はとても重要です。

最後は直感を大事にする

構造化面接は、いわば、面接に科学の方法を入れ込むような試みです。主観的だった面接に客観性をもたせ、認知バイアスにとらわれずに自社で求めてる人材をみきわめるための方法論といえます。

しかし、その一方で、採用において、直感は非常に重要です。ここでいう直感とは、第六感的なものではありません。過去の成功や失敗に基づき、瞬間的に頭に思い浮かぶ感覚を指しています。直感は、ポジティブとネガティブどちらの形でも現れます。別の記事で紹介したエアポートテスト(リンク)はその1つの試みです。

ネガティブな直感は、違和感となって感じられます。面接で「どこか違う」「フィットしていない」と感じたことを無視して採用すると、後から「やっぱりあの直感は正しかった」と後悔することがあります。その一方で、なんとなく面接で「うちに合いそう」「活躍してくれそう」と直感的に感じた方が、入社後に予想通りの働きをしてくれることは多いものです。

人材採用においては、候補者が入社後にどのくらい活躍できるかが重要です。より成果を出してもらうためにも、適切な選考プロセスや評価方法を確立して自社にマッチする方を見極め、採用後のサポート体制を整えることが重要です。

採用から入社後の活躍状況をデータとして蓄積していくことで、より良い採用ができるようになります。実際には、採用時の評価と入社後の評価を紐づけたシステムを適切に運用することは難しいののです。この課題を解決するためのソリューションを私たちは模索しており、採用に関わる方の役に立つサービスを開発したいと考えています。

まとめ

採用に客観性と面接での再現性を生み出すために構造化面接はとても有効です。初めのうちは評価者も候補者も形式に慣れず、緊張することもあるかもしれません。しかし何度か繰り返すことで経験を積むことができ、プロセスの改善に繋がります。

そして、この「面接プロセスが改善できる」という点こそ、構造化面接の非常に大きなメリットです。個人的に、面接プロセスの改善は、とても難しいものだと感じていました。ですので、構造化面接という手法を用いた面接改善の方法に関しては、また別途まとめたいと考えています。

この記事を書いたのは

鈴木 康孝
シックスワン株式会社。マーケティング&プロモーション領域担当。クリエイティブとかアイデアとか好き。尊敬する人、村上春樹さんと永井均先生と佐藤雅彦先生。今年の目標は、プログラムと英語をちゃんとやること。サウナと交互浴が大好き。
参考になった!そんな時は、是非シェアをお願いします。
関連記事
workday-og-theme

Workdayを調べてみた-HRテック企業レポート-

2_202306132

思ったより大変?構造化面接で困ったこと